鈴木 翔太
ゴールが縁起を生み出す
この記事では縁起について書いてみたいと思います。
今、私の目の前には一本のボールペンがあります。

1888年、ジョージ・サッフォード・パーカーによって筆記ブランドの「パーカー」が創業されました。
創業者のジョージ・サッフォード・パーカーには「優れたペンを作り上げる」というゴールがありました。
"優れたペン"というのは、少し抽象的な言葉ではあります。
認識というのは、その人の自我や時代によっても異なりますが、当時のペンというのは万年筆が主流であり、性能も良くありません。
現代ではインク漏れのしないペンというのは、100円のペンでも当たり前のことですが、「パーカー」のインク漏れを防ぐ「ラッキー・カーブ」の開発は、筆記具界に飛躍的な進歩をもたらしました。
世界で始めて毛細管現象を応用したことで、万年筆の祖と言われる「ウォーターマン」も、ペンのインク漏れにより大口契約を逃したことから万年筆の開発に挑戦しました。
現在と比較すると、それぐらいペンの性能は低かったのです。
その後「パーカー」は、空から谷底に落としても壊れないことを実証するマーケティングで丈夫さをアピールした「デュオフォールド」や、丈夫さや耐久性を向上させたパーカー初のボールペンの「ジョッター」、パーカー独自の新技術5th テクノロジーを採用した「インジェニュイティ」などの画期的なペンを開発していきます。
これらを可能にしたのは何かというと、ゴールだと私は考えています。
優れたペンを開発するには、当然のことですが高い技術が必要でした。
ではなぜ、現在も高い技術を保持しているのでしょうか。
それはゴールがあったからです。
「優れたペンを作り上げる」というゴールがこれらを可能にしたのです。
この「優れたペンを作り上げる」というゴールは、ジョージ・サッフォード・パーカーがどのような鮮明なイメージを持っていたかは本人にしかわかりませんが、このゴールに向かっていく中で高い技術を獲得していきました。
これを全て一人で行ったのかというとそうではありません。
高い技術を獲得しながら、このゴールに近づくのに多くの人々との出会いがあったはずです。
もっと言えば、「パーカー」は筆記メーカーですから、人々の手元に届くまでに仲介業者や店舗などを通していたでしょう。
少なくとも現在はそのようになっています。
私の手元に届くまでにも、いくつかの問屋が仲介し、小売店を通じています。
問屋の仲介が必要かどうかという議論は置いておいたとして、たくさんの人々が関わって私の手元に届いているということになります。
そこに関わった人達には両親がいて、両親にも両親がいて・・・
そこに関わった人達の友人がいて、友人にも両親や友人がいるのです。
このように縁起の繋がりを考えると、目の前の物一つ取っても宇宙全体にまで広がっていきます。
縁起とは、「すべては他の何かとの関係性によって成り立つ」という仏教の考え方です。
仏教と言うと宗教的な話に聞こえるかもしれませんが、この縁起というのはお釈迦さんが悟ったとされるものです。
日本で仏教というと、お葬式や死後の世界を思い浮かべられる方は多いと思いますが、お釈迦さんは、死後の世界はあるともないとも答えていません。
葬式仏教とはかなり異なります。
私の目の前にあるこのペンで考えてみると、私が使うからこそ書くという機能を持つ筆記具として成り立ちますが、売れずにお店に残っているならば不良在庫、お店でよく売れているのなら売れ筋商品として成り立ちます。
関係性によって成り立っているのです。
このように縁起として物事を認識すると、今私の目の前にあるこのペンは、パーカーのゴールが縁起を生み、物理的な制約を無視して存在していることになります。
ジョージ・サッフォード・パーカーは宇宙の一部であり、「優れたペンを作る」というゴールも宇宙の一部です。
この宇宙の中の人類一人一人に何らかのゴールがあります。
このゴールにある程度の抽象度があれば、他人を巻き込んでいくことになります。
ゴール達成のために起業したのであれば、社員や取引先、顧客などの形で他人を巻き込んでいくことになるでしょう。
社員が会社のゴール達成に向けて仕事をするのです。
そう考えると、我々の日々の行動は何らかのゴールによって起きていることがわかります。
ゴールが縁起を生み出すのです。
結果的に抽象度は上がり、スコトーマは減ります。
より多くのことを認識できるようになるのです。
私がコーチとして活動しているのも、ルー・タイスが戦争や差別をなくすためにコーチングを普及させてきたからだとも言えます。
ゴールによって縁が起こったのです。
SNSが普及した現代では、物理的な距離という制約なしに繋がりやすくなりました。
抽象度の高いゴールを設定したら、どのような人と繋がっているかを考えてみてはいかがでしょうか。
きっと想像以上のことができます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
感想などいただければ嬉しく思います。